父子二代にわたる彫刻家の
葛藤、慈愛、格闘 ――
戦後現代彫刻界を語る
パリ、ローマと大阪をつなぐ
236通の往復書簡集
本書は、保田春彦のパリ留学を機にかわされた父・龍門との私信236通を収録する往復書簡集である。
1921年パリ。グランド・ショミエール美術研究所でアントワーヌ・ブールデルについた龍門。37年を経て、同じ研究所でオシップ・ザッキンに師事する春彦。40代半ばにして中央を離れた彫刻家として訥々と生きる父、30代にしてヨーロッパで彫刻家デビューをはたす息子。
戦後現代美術の彫刻界を描く史料としての価値をもつとともに、春彦とイタリア人女性シルヴィアの恋愛をめぐる普遍的な家族のあり方、芸術家としての生を余すことなく描く。
【保田龍門(やすだ りゅうもん)】
1891年和歌山県那賀郡龍門村(現紀の川市)に生まれる。1912年、東京美術学校本科西洋画科入学。17年卒業、院展に出品、文展で卒業制作「母と子」が特選となる。21年パリ、グランド・ショミエール美術研究所に入所、アントワーヌ・ブールデルに師事。23年10月帰郷、西村伊作設計のアトリエを建てる。北淳子と結婚(のちに二男三女をもうける)。39年、和歌山県庁壁画レリーフ。53年、和歌山大学教授に就任、54年、紀陽銀行本店レリーフ、56年、和歌山大学定年退職。名古屋市平和堂立像、壁画を手がけ、65年、「南方熊楠」(未完)を遺し、逝去(73歳)。
【保田春彦(やすだ はるひこ)】
1930年和歌山県那賀郡龍門村(現紀の川市)に生まれる。52年、東京美術学校本科彫刻科を卒業。57年、第42回院展に「伝説」を出品、奨励賞(白寿賞)受賞、翌年パリ留学。グランド・ショミエール美術研究所に入所、オシップ・ザッキンに師事。シルヴィア・ミニオ・パルウエルロと60年に結婚(のちに二女が生まれる)。68年、帰国。翌年より武蔵野美術大学専任講師となり、2000年の教授退任まで後進の指導にあたりつつ作品制作を続ける。代表作に「アンテ・スパツィー・エタテム後期」(東京国立近代美術館)、「聚落を囲う壁I」(第26回中原悌二郎賞受賞)など。2018年逝去。
登録情報
著者 | 保田龍門・保田春彦 |
---|---|
ISBN | ISBN978-4-86463-011-5 C3070 |
体裁 | A4判/上製 クロス装/472 頁 |
刊行日 | 2013年12月24日 |
ジャンル | 美術/芸術理論 |
目次
第1章 1958年1月から4月
第2章 1958年5月から12月
第3章 1959年2月から7月
第4章 1959年8月から12月
第5章 1960年1月から12月
第6章 1961年1月から12月
第7章 1962年1月から12月
第8章 1963年1月から12月
第9章 1964年1月から65年2月
解題 酒井忠康
年譜 寺口淳治編
保田家家系図