日本画と材料近代に創られた伝統

荒井経/著

日本画と材料
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日本画のアイデンティティともされる「岩絵具」や「和紙」。
それらの歴史は、意外なほど浅い。
明治以降、日本画の材料が今あるかたちへと変化を遂げた真の理由とは?

日本画家であり、気鋭の研究者でもある著者が、日本画の祖とされる狩野芳崖の《仁王捉鬼図》に対する蛍光X線分析を使った自然科学調査を皮切りに、文献資料を手掛かりにしながら、材料史的研究に取り組んだ成果を集約。明治時代から現代までの日本画材料の変化をたどりつつ、韓国、中国といった東アジア各国の国号絵画についての渡航調査などを総合して、多角的な視点から「日本画とは何か」を考察した。日本画という伝統と革新を背負った“特異な近代絵画”を改めて検証し、その実像を捉えなおす。日本画を描く人にはもちろん、鑑賞する人にも新たな視点をもたらす1冊。2016年、著者は本書により第28回倫雅美術奨励賞(美術評論部門)受賞。2017年、第11回文化財保存修復学会業績賞受賞。

【荒井 経(あらい けい)】
1967(昭和42)年生まれ。日本画家。東京藝術大学大学院保存修復日本画准教授。武蔵野美術大学非常勤講師。筑波大学芸術専門学群日本画卒業、同大学院修士課程修了。東京藝術大学大学院修士課程文化財保存学専攻修了、同博士後期課程修了、博士(文化財)。東京学芸大学専任講師、准教授を経て現職。



*2015年10月刊行時データです

登録情報
著者荒井経
ISBNISBN978-4-86463-034-4 C3071
体裁四六判/304 頁
刊行日2015年10月09日
ジャンル美術

目次

序章  日本画の誕生と歩み
日本画と材料/狩野派から日本画へ/東京美術学校の設立/横山大観と東京美術学校/日本美術院と再興日本美術院/前衛の時代/戦後の日本画/現代の日本画

第一章 日本画と西洋顔料
第一節 狩野芳崖の作品調査から
芳崖と色彩の改良/日本絵画の色材/合成顔料の隆盛/芳崖の遺品顔料/《仁王捉鬼図》の技法再現模写/《仁王捉鬼図》の自然科学調査/《仁王捉鬼図》と《悲母観音》/「日本画で西洋画のやうなもの」/日本画と膠/異形の日本画

第二節 菱田春草の作品調査から
春草作品の自然科学調査/春草の画業/春草と西洋顔料/朦朧体の色彩表現/色的没骨の色彩表現/色彩表現から空間表現へ/春草と日本画

第二章 日本画と岩絵具
岩絵具/近代岩絵具/近代岩絵具の起源/大日本絵画講習会/新岩絵具と近代工芸/岩絵具の新表現――横山大観《山路》/岩絵具の新表現――北野恒富《日照雨》/恒富と成園/近代岩絵具の普及/再来する異形の日本画/日本画の〝自由〟/岩絵具とマティエール/近代絵画とアマチュアリズム/「歪み」を引き受ける色材

第三章 日本画と和紙
絵絹から画紙へ/〝自由〟な支持体/巨大和紙の登場/絵画館壁画の支持体/神宮紙の誕生/岡大紙の誕生/神宮紙と岡大紙/壁画用紙の系譜/中国紙に描かれた日本画/中国紙と日本紙/真体の水墨/なぜ「麻紙」なのか/支持体に見る〝脱亜〟と〝入欧〟

第四章 日本画と水墨画
現代日本画と水墨画/墨と線/墨の教育/書画の分離/朦朧体の挑戦/線から色へ/韓国画という隣人/ミクストメディアか日本画か第五章 日本画と模写中国製の岩絵具/留学生と岩彩画/岩彩画と壁画模写/天心と模写/新興大和絵と古典/壁画模写の意味/国号絵画を超えて

あとがき
主要参考文献

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