民俗学 フォークロア編過去と向き合い、表現する
フォーク(人々)あるところに
かならずロア(物語)あり
それを見聞きし、記し、読み解き
みずからの発見/表現とするには?
フォークロアとは、フォーク(人々、ある集団)と、ロア(伝統的な知識や物語)を合わせた造語である。今やレトロなことばとなったフォークロア。しかし、伝統をただ重んじるのではなく、過去からあるものに意味を見出し、今を豊かにしようというまなざしがその根底にある。なぜか懐かしくて理想的。ロマンチックだけど、ちょっぴり怖くて蠱惑的。そんなフォークロアを引き受けながら、みずからの表現を模索する旅に出よう。
『民俗学 ヴァナキュラー編 人と出会い、問いを立てる』(2021年11月弊社刊)の続編。
表紙挿画:加藤伸幸 帯イラスト:おおやまなつね 装幀:馬面俊之
1973年、静岡県浜松市生まれ。武蔵野美術大学教養文化・学芸員課程教授、東京大学教養学部非常勤講師。和歌山県立紀伊風土記の丘学芸員(民俗担当)、東北学院大学文学部歴史学科教授(同大学博物館学芸員兼任)を経て、2019年より現職。博士(文学)。専門は民俗学、博物館学。
近著に『民俗学 ヴァナキュラー編―人と出会い、問いを立てる』(武蔵野美術大学出版局、2021年)、『津波とクジラとペンギンと―東日本大震災10年、牡鹿半島・鮎川の地域文化』(社会評論社、2021年)、『渋沢敬三とアチック・ミューゼアム―知の共鳴が創り上げた人文学の理想郷』(勉誠出版、2020年)、『文化遺産シェア時代―価値を深掘る〝ずらし〟の視角』(社会評論社、2018年)、『復興キュレーション―語りのオーナーシップで作り伝える〝くじらまち〟』(社会評論社、2017年)ほかがある。
登録情報
著者 | 加藤幸治 |
---|---|
ISBN | ISBN978-4-86463-152-5 C3039 |
体裁 | A5判/並製/242頁 |
刊行日 | 2022年09月30日 |
ジャンル | 人文・社会・自然 |
目次
はじめに
フォークロアのイメージ/螺旋構造としての三つの顔/フォークロア思考のレッスン
フォークロアの三つの顔
ノスタルジア(郷愁)―フォークロアはなぜ懐かしいか
フォークロアと仮構の故郷/懐かしさはどこからやってきたか/
平原の理想郷/民話採集の地としての理想郷/昔話研究へとつながる神話の理想郷/
民衆に宿る文化の発見/ノスタルジック・ナショナリズム
ファンタジー(幻想)―フォークロアはなぜちょっと怖いか
感情の発露と想像の自由/ロマン主義を生み出した近代/
芸術におけるロマン主義/フォークロアのゴシック的イメージ/フォークロアの魔力
フォーク・カルチャー(民俗文化)―フォークロアからどう生活を理解するか
現代に息づく文化の伝統/民俗誌的に地域を見る/ムラを生きる空間・時間/
社会科学的な合理性と文学の心
わたしたちのなかのフォークロア
人体模型に見る身体観
生きる活力の表現/痕跡から銅人形を検討する/銅人形のたどった「人生」/
江戸庶民の医学観/人体の模倣と偶像/不気味の谷/フォークロア思考のレッスン(1)
意匠の日本らしさ・地域らしさ
失いゆくなかで発見するもの/日本三大漆器産地の黒江/黒江塗における技術的特徴/
分業体制のなかの年中行事/日本らしさを追求する職人たち/名物をデザインする/
デザインされる郷土/フェイクロア、フォークロリズム/フォークロア思考のレッスン(2)
自文化を探求し実践する
東北の造形文化の素朴さ/郷土玩具の発見と旅/版画で表現された雪国の文化/
勝平得之が描いた秋田の風景/民俗学のアマチュアリズム/フォークロア思考のレッスン(3)
生活を取り巻く道具ともの
過去の生活の痕跡としての民具/分類思考の近代性/民俗文化財の分類/分類の不可能性/
フォークアートの神話/現代の民具/フォークロア思考のレッスン(4)
怪異とフォークロアの文学
山怪は生きたフォークロア/「信じるも八卦、信じないも八卦」/
山の怪異小説としての『高野聖』/『遠野物語』の世界観/
三島由紀夫の『遠野物語』評/象徴主義的な幽霊との遭遇劇/集めると見えてくる/
フォークロア思考のレッスン(5)
大災害を伝承する文学
災害文学の古典/災害経験の歴史を刻む/
「記録」と「文学」の狭間にあるもの/ラフカディオ・ハーンのまなざし/
フォークロアを記述する/災害経験は「伝える」ことができるか/
フォークロア思考のレッスン(6)
概念をかたちにすることばと造形
ことばは認識を拡張する/言外の意味とフォークロア/人々の自然理解とことば/
風という不思議な現象/異界・異形の民俗と造形/幻獣を描き継ぐ文化/
ムカデ絵馬の倍返し/ことばの持つ想像力と創造性/フォークロア思考のレッスン(7)
これからの時代のフォークロア
フォークロアはものに宿る
ライフと表現/他者のまなざしをみずからのものとする/
感情のコレクション/新たなコレクション観
誰にも開かれた問いと表現
誰のなかにもある誰かの物語/文化継承とは新たに表現すること/
過去の文化の引き受け方/研究や表現の自由と倫理/開かれたアマチュアリズム
あとがき
各章を深める一冊
各節の関連論文
書評・紹介
関連書リンク
加藤幸治/著 / 定価:1,760円 (本体価格:1,600円)
神野善治/編 神野善治・小薮大輔・室山哲也・三橋光太郎/著 / 定価:2,420円 (本体価格:2,200円)
田村善次郎/著 / 定価:2,090円 (本体価格:1,900円)
十時啓悦/著 / 定価:2,530円 (本体価格:2,300円)
白尾隆太郎・三浦明範/著 / 定価:2,420円 (本体価格:2,200円)
向井周太郎/著 / 定価:2,750円 (本体価格:2,500円)