彫刻とは何か?
教育の現場に身をおく作家たちの活きた言葉を通して
彫刻が多様でわからないものであることを理解し、
それぞれの視点であらためて彫刻を捉え直す
素材・技法が様々で他ジャンルと結びつくことも多い今日の彫刻は、「彫刻とは何か」という共通の理解をもち得ていない。彫刻は、彫刻に関わる人の数だけ存在する。彫刻が「わからないもの」と見做される理由のひとつには、この彫刻についての考えの多様さがある。しかし、この多様さ=彫刻のわからなさこそ、彫刻の豊かさの証明なのである。彫刻を識り、彫刻を考えるための一冊。武蔵野美術大学がおくる『彫刻の教科書』第一弾。
*第2版が、2024年5月末に納品されました
*書籍刊行時のプロフィールです。
冨井大裕(とみい・もとひろ)
1973年新潟県生まれ。美術家。武蔵野美術大学教授(彫刻学科研究室)。99年武蔵野美術大学大学院修了。2015−16年文化庁新進芸術家海外研修制度研修員としてニューヨーク(アメリカ)に滞在。既製品に最小限の手を加えることで、それらを固定された意味から解放し、色や形をそなえた造形要素として、「彫刻」のあらたな可能性を模索する。個展、グループ展多数。主な収蔵先:東京都現代美術館、川崎市市民ミュージアム(近藤啓輔との共作)、新潟市美術館、東京国立近代美術館、練馬区立美術館。実験スペース「壁ぎわ」「はしっこ」世話人。
藤井 匡(ふじい・ただす)
1970年山口県生まれ。東京造形大学教授。九州大学文学部卒業。95年から2007年まで宇部市役所学芸員として『現代日本彫刻展』ほかの展覧会を担当。後にフリーランスとして、東京や大阪での展覧会や、日本各地でのアート・プロジェクトに携わる。単著に『現代彫刻の方法』(美学出版)、『公共空間の美術』『風景彫刻』『眞板雅文の彫刻=写真』『ミニマリズム後の人間彫刻』(いずれも阿部出版)。共著に『よみがえるレオナルド・ダ・ヴィンチ』(東京美術)、『ぺらぺらの彫刻』(武蔵野美術大学出版局)など。
山本一弥(やまもと・かずや)
1978年高知県生まれ。彫刻家。武蔵野美術大学教授(共通彫塑研究室)。武蔵野美術大学大学院修了。αMプロジェクト2006、中京大学アートギャラリーC・スクエアなどで個展の他、「光 陰―ひかり、かげ、とき―」岡崎市美術博物館、「ダブルリフレクション 世界を見つめなおす瞬間」富山市ガラス美術館などのグループ展に参加。主なコミッションワーク:スカパー東京メディアセンター、飯野ビルディング、JPタワー名古屋、横浜野村ビル、ホテルオーレインなど。
松本 隆(まつもと・たかし)
1968年東京都生まれ。彫刻家。古典彫刻技法研究家。沖縄県立芸術大学教授。武蔵野美術大学非常勤講師(共通彫塑研究室)。武蔵野美術大学彫刻学科卒業。塑造(陶、粘土、ブロンズなど)による作品発表のほか、古代・中世の彫刻技法研究にも携わる。研究論文「古代ギリシアにおける大型ブロンズ彫刻の鋳造技法研究―レッジョ・カラーブリア国立考古博物館蔵《リアーチェのブロンズ(戦士像A・B)》の制作工程の再構成―」『多摩美術大学研究紀要』第35号など。
黒川弘毅(くろかわ・ひろたけ)
1952年東京都生まれ。彫刻家。武蔵野美術大学教授(彫刻学科研究室)。77年 東京造形大学造形学部美術学科彫刻専攻卒業(79年まで研究生として在籍)。91−92年文化庁派遣芸術家在外研修員としてイタリア・ミラノに滞在。学部在学中から一貫してブロンズ彫刻を制作し、個展、グループ展多数。また鋳造技術及び近代彫刻研究、屋外彫刻の修復・保存にも携わる。主な収蔵先:東京国立近代美術館、国立国際美術館、神奈川県立近代美術館、愛知県美術館、徳島県立美術館、府中市美術館、宇都宮美術館、高松市美術館、いわき市美術館、足利市立美術館、市原市水と彫刻の丘、福山市など。
細井 篤(ほそい・あつし)
1963年長野県生まれ。彫刻家。武蔵野美術大学非常勤講師(彫刻学科研究室)。武蔵野美術大学大学院修了。93年から個展、グループ展、展覧会に出品、多数のコミッションワークを手掛ける。アートコロニー・ガリチェニック、ガスワークス、NYフリーマンフェローシップなど海外アートプログラムに参加。主なコレクション、コミッションワークとして愛知県美術館、デルメンデレ現代美術館、駒ケ根高原美術館、新潟スタジアム、深川ギャザリア、みなとみらい・グランドセントラルタワー、ザ・プリンスギャラリーなど。
伊藤 誠(いとう・まこと)
1955年愛知県生まれ。彫刻家。武蔵野美術大学教授(彫刻学科研究室)。武蔵野美術大学大学院修了。96−97年文化庁派遣芸術家在外研修員としてアイルランドに滞在。1980年代から現在まで展覧会、アートプロジェクトに出品しパブリックアートに携わる。主な収蔵先:国立近代美術館、宇都宮美術館、千葉市美術館、愛知県美術館など。2008年から17年まで、所沢で隔年開催される美術家と執筆家の協働企画「引込線」の実行委員として参加する。
桑名紗衣子(くわな・さえこ)
1982年千葉県生まれ。武蔵野美術大学非常勤講師(彫刻学科研究室)。武蔵野美術大学大学院修了。学生時代から彫刻を学ぶ傍ら、波佐見や信楽といった窯業地でレジデンスに参加し制作。2010年代から現在まで展覧会、アートプロジェクトに出品しパブリックアートに携わる。近年の展覧会に「でんちゅうストラット」小平市平櫛田中美術館、「インクルーシブ・サイト―陶表現の現在」千葉市美術館など。コミッションワークにホテルユーラシア舞浜アネックス、中央区立桜川敬老館等複合施設がある。
櫻井かえで(さくらい・かえで)
1974年東京都生まれ。彫刻家。武蔵野美術大学客員教授(共通彫塑研究室)。武蔵野美術大学大学院修了。第13回KAJIMA彫刻コンクール銅賞。ギャラリーせいほう、日本橋髙島屋、川越市立美術館などで個展。「新収蔵品展」佐久市立近代美術館、BankART Life3「新・港村 小さな未来都市」新港ピア、「大地の芸術祭2015越後妻有アートトリエンナーレ」、「ONE ART Taipei 2023 藝術台北」などのグループ展に参加。主な収蔵先:佐久市立近代美術館ほか
棚田康司(たなだ・こうじ)
1968年兵庫県生まれ。彫刻家。東京藝術大学大学院修了。2001年文化庁芸術家在外研修員としてベルリンに7ヵ月滞在。2015−16年インドネシア、シンガポールにて3ヵ月滞在制作。第8回岡本太郎記念現代芸術大賞特別賞。第20回タカシマヤ美術賞。第30回平櫛田中賞。主な個展:ヴァンジ彫刻庭園美術館、練馬区立美術館、伊丹市立美術館、ミヅマアートギャラリーなど。その他、国内外のグループ展に参加。主な収蔵先:国立国際美術館、龍美術館(上海)、高松市美術館、東京都現代美術館、兵庫県立美術館、市立伊丹ミュージアム、国際交流基金など。作品集:『たちのぼる。』(青幻舎)など。
戸田裕介(とだ・ゆうすけ)
1962年広島県広島市生まれ。彫刻家。武蔵野美術大学教授(共通彫塑研究室)。専門:石彫、金属造型、屋内外における大型彫刻制作。武蔵野美術大学大学院修了。英国王立芸術大学院大学PEP修了。日航財団「空の日」芸術賞海外派遣芸術家としてフィレンツェ、ロンドンに滞在。「雨引の里と彫刻」(茨城)、「UBEビエンナーレ/現代日本彫刻展」(山口)、「釜山ビエンナーレ」(韓国)ほかに参加。アメリカ、イタリア、インド、ドイツ、ロシアなどの、石彫・鉄鋼彫刻国際シンポジウムやアーチスト・イン・レジデンスで滞在制作。日本美術家連盟会員。
長谷川さち(はせがわ・さち)
1982年兵庫県生まれ。彫刻家。武蔵野美術大学専任講師(共通彫塑研究室)。武蔵野美術大学大学院修了。2008年より、ヒノギャラリーなどで個展を開催。主な個展として 「ロビー展―長谷川さちの彫刻―レイライン」 平塚市美術館。主なグループ展として 「空間に線を引く―彫刻とデッサン展」 平塚市美術館、「すべてのひとに石がひつよう―目と、手でふれる世界」ヴァンジ彫刻庭園美術館、 「オムニスカルプチャーズ―彫刻となる場所」 武蔵野美術大学美術館など。主な収蔵先:平塚市美術館。
原 一史(はら・かずふみ)
1959年愛知県生まれ。彫刻家。武蔵野美術大学教授(共通絵画研究室)。武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科卒業。2005−06年本学在外研修でイタリアに滞在。84−91年まで「行動展」、「日本国際美術展」、「東京野外現代彫刻展」、「湘南ひらつか野外彫刻展」、「美濃加茂彫刻シンポジウム」、「洞爺村国際彫刻ビエンナーレ」などのコンクール・展覧会に参加。ときわ画廊、村松画廊、ギャラリー山口などで個展多数。専門は主に金属(鉄、ステンレス)を使った彫刻の制作と研究。
袴田京太朗(はかまた・きょうたろう)
1963年静岡県生まれ。彫刻家。武蔵野美術大学教授(油絵学科研究室)。武蔵野美術大学彫刻学科卒業。文化庁芸術家在外研修員、五島記念文化賞美術新人賞、第22回タカシマヤ美術賞。静岡市美術館、平塚市美術館、カスヤの森現代美術館などで個展。「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」、「ミニマル/ポストミニマル」宇都宮美術館、「DOMANI・明日展2021」国立新美術館などに参加。主な収蔵先:愛知県美術館、宇都宮美術館、川崎市市民ミュージアム、佐久市立近代美術館、資生堂アートハウス、横浜美術館、ファーレ立川ほか。
髙柳恵里(たかやなぎ・えり)
1962年神奈川県生まれ。美術家。多摩美術大学教授(絵画学科)。武蔵野美術大学非常勤講師(彫刻学科研究室)。多摩美術大学大学院修了。国立国際美術館、「油断」上野の森美術館ギャラリーなど、個展多数。「彫刻の遠心力―この十年の展開」国立国際美術館、「ひそやかなラディカリズム」東京都現代美術館、「美術館を読み解く」東京国立博物館、などに参加。主な収蔵先:東京国立近代美術館、滋賀県立近代美術館、霧島アートの森、国立国際美術館、東京都現代美術館、第一生命保険相互会社。
AKI INOMATA(あき・いのまた)
1983年東京都生まれ。美術家。武蔵野美術大学非常勤講師(彫刻学科研究室)。多摩美術大学非常勤講師。東京藝術大学大学院修了。2017年Asian Cultural Councilの招聘を受けてニューヨーク(アメリカ)に滞在。生きものとの関わりから生まれるもの、あるいはその関係性を提示している。作品の主な収蔵先に、ニューヨーク近代美術館、南オーストラリア州立美術館、金沢21世紀美術館、北九州市立美術館ほか。「あいち2022」、「六本木クロッシング2022展:往来オーライ!」、「Broken Nature」ニューヨーク近代美術館、「第22回ミラノ・トリエンナーレ」などに参加。
多和圭三(たわ・けいぞう)
1952年愛媛県越智郡(現今治市)大三島生まれ。彫刻家。武蔵野美術大学客員教授(共通彫塑研究室)。多摩美術大学彫刻学科教授(2009−20年)。日本大学芸術学部美術学科彫刻専攻卒業。81年より、真木画廊、田村画廊、ときわ画廊、ヒノギャラリーなどで個展。主な展覧会として「鉄を叩く―多和圭三展」足利市立美術館・町立久万美術館・目黒区美術館を巡回、2010−11年、「所沢野外展」所沢航空記念公園、1978−84年、「真鶴町・石の彫刻祭」2021年、など。主な収蔵先:愛知県美術館、神奈川県立近代美術館、大三島美術館、東京国立近代美術館、文化庁など。
登録情報
編者 | 冨井大裕・藤井匡・山本一弥 |
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執筆者 | 冨井大裕・藤井匡・山本一弥・松本隆・黒川弘毅・細井篤・伊藤誠・桑名紗衣子・櫻井かえで・棚田康司・戸田裕介・長谷川さち・原一史・袴田京太朗・髙柳恵里・AKI INOMATA・多和圭三 |
ISBN | ISBN978-4-86463-156-3 C3071 |
体裁 | A5判 並製 288頁 |
刊行日 | 2023年03月31日 |
ジャンル | 芸術理論/美術 |
目次
はじめに 冨井大裕
概論「なぜ〈わからない彫刻〉か」 藤井 匡
彫刻をつくる
モデリング
「モデリング」について
粘土A 松本 隆/粘土B 黒川弘毅
型取りA 山本一弥/型取りB 細井 篤
樹脂A 伊藤 誠/樹脂B 山本一弥
セラミック 桑名紗衣子
カービング
「カービング」について
木A 櫻井かえで/木B 棚田康司
石A 戸田裕介/石B 長谷川さち
金属
「金属」について
鉄A 伊藤 誠/鉄B 原 一史
ブロンズA 松本 隆/ブロンズB 黒川弘毅
ミクスト・メディア
「ミクスト・メディア」について
インスタレーションA 冨井大裕/インスタレーションB 袴田京太朗
レディ・メイドA 髙柳恵里/レディ・メイドB 冨井大裕
デジタルメディア AKI INOMATA
特色のある授業
「特色のある授業」について
彫刻学科研究室の授業について 冨井大裕/ダンボール 伊藤 誠/内側の形 伊藤 誠/
生物の表現 黒川弘毅/抽象彫刻のABC 伊藤 誠
共通彫塑研究室の授業について 山本一弥/粘土・石膏による彫刻制作 長谷川さち/
塊材による彫刻制作 戸田裕介/面材による彫刻制作 長谷川さち/
あるはじまりの朝 多和圭三
おわりに 山本一弥
書評・紹介
関連書リンク
戸田裕介/編 石崎 尚・伊藤 誠・鞍掛純一・田中修二・戸田裕介・袴田京太朗・藤井 匡・松本 隆・森 啓輔/著 / 定価:3,630円 (本体価格:3,300円)
新見隆/著 / 定価:3,520円 (本体価格:3,200円)
武蔵野美術大学油絵学科研究室・通信教育課程研究室/編 / 定価:4,070円 (本体価格:3,700円)
田中正之/編 / 定価:2,640円 (本体価格:2,400円)