和歌山県立近代美術館「保田龍門・保田春彦展」

保田春彦先生からとつぜん電話がかかってきた。
「あなたも来てください」
これは、もう、絶対命令である。
某日、万障繰り合わせ、国分寺から2時間くらい
かけて行く。
5月26日から、和歌山県立近代美術館ではじまる
保田龍門・保田春彦展」のために、
和歌山近美から学芸員の方が来られるので、
その方をハムコに紹介したいという意図が
保田先生にはある(らしい)
学芸員の方は、保田先生と細かな打合せをされる。
電話やメールでもすみそうなことではあるが、
話の合間に、制作のこぼれ話がでたりするので、
なるほど、遠路からたずねて来られるわけだ。
とにかく春彦先生がお元気で、万事順調満悦至極。

帰り道のタクシーで、学芸員の方に
書簡集を熟読しています」と言われて恐縮する。
とくに用がなくとも、手紙を書いたり、電話をしたり、
お訪ねしたり、という習慣がなくなってしまったハムコ、
最晩年まで、こまごまと細いペンで手紙をしたためた
龍門先生にはあらためて敬服する。
1960年代、春彦夫人のシルヴィアさんが、舅である
龍門先生あてた手紙は、平易なフランス語で(龍門&
シルヴィアの「共通語」)ごく短い。
遠い国にあって、日本の家族の皆様の御健康をお祈り
しています……それが内容のほとんどであり、
そこに小さなお嬢さんの成長がほんの一筆加わる。
それでも、この手紙を受け取った龍門先生の喜びは、
あたかも生き甲斐のように大きかったことが
書簡集からも読み取れる。

紙に同じことを繰り返し繰り返し書き、伝えることを
いつから疎んじるようになってしまったのだろう。
メールなんてある日とつぜん、すべて消えてしまい、
何もなかったことになってしまうだろう。
[編集:ハムコ]

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