新見隆『イサム・ノグチ 庭の芸術への旅』

新見先生の「イサム・ノグチ」の出発点は、
1996年にセゾン美術館で開催された展覧会
「イサム・ノグチと北大路魯山人」にある(と思う)。
もちろん、新見先生はそのキュレーターだった。

1952年頃、ノグチは鎌倉の北大路邸の離れに、
新妻・山口淑子と住み、作陶三昧に明け暮れる。
その頃の作品「私がつくったのではない世界」は
掌にのるようなサイズらしいが、初めて見たとき
「なんだかなー(ヘンなの)」とハムコは思った。
(上の写真の、左ページ下の作品です)
この作品に固執する新見節(セツではなくブシ)にも
まったくついていけなかった。

その後、図書館でありったけのイサムノグチ本を
片っ端から見ていくと、原型は「私がつくったの
ではない世界」だ!と言いたくなるような庭園が
あった。
1982年完成の「カリフォルニア・シナリオ」。
「私がつくったのではない世界」から30年後に
「庭」になったとしたら、構想30年になる。

が、もっと前の1941年頃、彼は「かたちだけで
つくる遊園地」をニューヨーク市に提示していた。
この遊園地には遊具らしいものはなくて、
地面の凸凹を利用した画期的なプランだったが、
時代を先取りしすぎていたのか簡単に却下された。
(その時の模型写真は、本体表紙をご覧あれ。
本体表紙はカッコイイけど、うまく撮れない!)
「かたちだけでつくる遊園地」は「私がつくった
のではない世界」にも重なり、またその流れはやがて
札幌モエレ沼公園に昇華されてゆくのがはっきりとわかる。
モエレ沼公園は彼の死後、2015年に完成した。

カバーの写真は、香川県牟礼にあるイサム・ノグチ
庭園美術館。写真は篠山紀信さんの「シノラマ」。
どうです、手にとってみたくなったでしょう?
装丁は、馬面俊之さんです。
[編集:ハムコ]

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