11月15日から17日にかけて、大学出版部協会編集部会
秋季研修会が名古屋で行われた。
悪い癖で、行く前は何とも億劫でぼやくのが常だが、
参加してみると、普段は話せない遠くにいる仲間との
直にしか聞けない話が満載で、新たに得ることが多かった。
ことに2日目、名古屋大学の隠岐さや香先生の御講演
「学知・イノベーション・書物」は目からウロコであった。
隠岐先生は今年の夏に『文系と理系はなぜ分かれたのか』
という新書を上梓されたばかり(だというのに10月に私が
購入したのは3刷であった!)
科学史を御専門とする隠岐先生のこの御本は「なぜ」
というよりも、その分かれている現状分析で、
これが御講演のテーマかと思っていたら、ぜんぜん
ちがっていた。
最初に「イノベーション」という言葉の歴史にはじまり、
遡ること17世紀、フランシス・ベーコンの時代には、
かなり否定的に使われていたという。
それが20世紀半ばになって「テクノロジー」という
言葉と結びつき、明るい未来を予想させるような
ポジティブな印象になったという。
そして今や、経済産業省が「イノベーション政策」を
打ち出している。
イノベーション政策1.0から2.0、さらには3.0となり、
だんだんと属性の違う人々をつなげるための
「デザインとファシリテーション やらわかい管理の
時代」へと進んでいるという。
「デザインシンキング」と呼ばれているらしい。
おーまいが。ココロで叫んだとたん、隠岐先生が
「編集者とファシリテーターは同じか、違うのか?」
と真剣に、私たちに問われた。
おーおーおーおーまいが。
隠岐先生はファシリテーターをちょっと勘違いして
おられるところもありそうだ。
しかし、論点は、イノベーション政策3.0に対して、
研究者と学術出版者が一緒に考えたほうが良いのでは
ないか、という提案である。
つまりオープンアクセスが徹底して求められる政策に、
この新たな波を(疑いつつ)利用しつつ、今こそ
研究者と学術出版と読者をつなぐ新たな関係を模索すべき
ではないか、という御講演に拍手をおくった。
ニャゴヤに行ってよかった。
[編集:ハムコ]
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