「奴婢訓」@ムサビ美術館

いよいよ来週から「奴婢訓」が始まる。
7月2日から6夜連続で、ムサビ美術館で幕をあけるのだ。
いや、正確には「幕」はない。美術館のエントランスに、いきなり舞台が設営されたのだから。
6月24日、大きなトラック3台によって舞台・美術・衣装・照明・音響の各装置が運び込まれた。60名もの人々が、朝の10時から夜の9時半まで、文字通り走り回り、なんとほんとうに舞台が出現してしまったのだ!
寺山修司原作のこの作品は、1978年、アムステルダムでの初演以来、どれだけの上演をかさねてきたことか。その寺山作品の後期の舞台美術を担当したのが、小竹信節先生(空間演出デザイン学科)である。
あらためて寺山の戯曲を読んでみると「乳搾り機にかけられた全裸の乳搾り女」とかでてくるが、どんな機械なのか描写はない。まったく描写がないところから、その機械を設計したのが小竹先生。
「機械は溶接工の親父のところに通って、一緒に作る。自分が実験台になって吊るされたりしてさ、その写真を寺山に見せるとね、『うん、これでいい、これでいこう』ってなる。寺山は言葉の人でしょう? だから、こういうのにジェラシーがあるんだよね」
「馬鹿正直に作っちゃったもんだから、微調整しないといけない。だから毎日、来ないといけないんだ。舞台の最中に機械が止まると、寺山が『直してこい』って言うから、仕方なく舞台に上がって直すでしょ、動き出すと、お客さんが拍手してくれたりね」
小竹先生のお話を聞いているとうっとりする(なにしろ声がステキ!)。当然ながら、お針子さんたちにも大人気で、小竹先生が衣装を見てくれるとなると大喜びで、先生に抱きついたりしている。まるで妖精に囲まれた王様のようだ。もう舞台が始まっているみたい(その下では、荒っぽい大工仕事がトンカン続いていた)。
「奴婢訓」ムサビ版、はじまりはじまり! 秋には『奴婢訓 2019』が刊行の予定です。
[編集:ハムコ]

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