2019大学出版部協会編集部会秋季研修会@ダーウィンルーム

先週の金曜日、11月8日に大学出版部協会編集部会の秋季研修会があった。
場所は下北沢のダーウィンルーム。ここは1階が自然科学系の書籍とグッズの店舗、2階には様々なイベントが開かれるスペースがある。
今回は、3人の研究者、軟体動物の奥谷喬司先生、真骨魚類の松浦啓一先生、魚類分類学の武藤文人先生にご登壇いただいた。

「軟体動物」と言われると、一瞬「?」が浮かぶが、奥谷先生のご専門はイカ・タコ・貝の分類学である。
「さかなくんのお師匠さん」という紹介が、一番わかりやすいかもしれない。
奥谷先生が発表された論文は膨大にあり(88歳の現在も鋭意執筆中)、その一方で、子ども向けの図鑑や、新書も書いておられる。
著者として、論文と書籍を執筆する際のモチベーションの違い、書籍の編集者に求めることなどをうかがった。

『イカはしゃべるし、空も飛ぶ』は、奥谷先生が1989年に書かれた講談社ブルーバックスの1冊。
4万部を超えるベストセラーとなり、その後、新装版が出され、電子書籍にもなっている。
イカ・タコの専門家である奥谷先生のもとには、当時、しょっちゅう新聞や雑誌の取材が入り、その度に基本的なことから説明するのに閉口した先生は、マスコミ対策のためにこの本を書き下ろしたという!

「この本を読んでから、取材にいらしてください」
すると、取材の時間は大幅に短縮され、大いに役立ったとか。
しかし、マスコミは読者のうちのほんの一握りであったはずだ。
イカに関する基本的な知識をとてもわかりやすく、おもしろく、正確に伝えることで、4万人の心を掴んだのだ。
その奥谷先生は「論文の執筆は芸術と同じ」と仰る。
ある対象に想を得て、構成し、執筆する。そこで間違いが指摘されても、すべては自己責任という覚悟があるという。
しかし書籍には、一般読者がいる。欠けたところや、誤りがあってはならない。

これを聞いて、論文=アート、書籍=デザインという勝手なカテゴライズがハムコの頭に浮かんだ。
奥谷先生の中では、アートとデザインが共存している。
しかも、その境界線がはっきりしている。
うーん、そうなんだ。感激する。
(編集:ハムコ)

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