芦原義信さん
最近読んだ阿部卓也『杉浦康平と写植の時代 光学技術と日本語のデザイン』(慶應義塾大学出版会、2023年)は、私たちの暮らしが文字とともにあること、その事実がいかに豊かかということを改めて気づかせてくれる本でした。同書は、建築家芦原義信に触れてはじまります。芦原義信は東京芸術劇場やソニービルなどの設計で知られる、戦後モダニズムを代表する建築家で、杉浦デザイン、写植、文字…などこの本から想起するキーワードからはかけ離れているので、冒頭から爽やかに裏切られます。杉浦事務所と写研(モリサワと双璧をなした写植企業)の本社、どちらも芦原設計というささやかな共通点に触れるのみですが、この後「杉浦康平」と「写...