
日本古典芸能史
天王寺の妖霊星を見ばや(てんのうじのようれいぼしをみばや)。太平記第5巻4「相模入道田楽を好む事」にこういう文が出てきます。頃は鎌倉幕府末期、南北朝前夜。田楽と闘犬に耽った北条高時(相模入道)が京都と南都(奈良・興福寺)の田楽者を招いて連日宴席を催したときのこと。鳶のような顔をしたもの、羽のあるものなど異形のものたちが「妖霊星を見ばや」と言った。それを女官が聞いた。おそろしや。というくだりなのですが、この妖霊星について、「玄玖本では〈や よろぼし〉と記述されている」という注があり、「天王寺のよろぼし」なら、能の、四天王寺を舞台にした弱法師(よろぼうし)のことではないかと考えた次第です。弱法師は...