オットー・ノイラート(1882-1945)をインターネットで検索すると「ノイラートの舟」という、『アンチ・シュペングラー』で用いられた比喩と、
2007年秋に武蔵野美術大学美術資料図書館(当時の名称です)で開かれた展覧会「世界の表象ーオットー・ノイラートとその時代」のニュースと展覧会図録がヒットします。
科学哲学者、社会学者、政治経済学者、論理的実証主義哲学者と、さまざまな肩書きが並びますが、デザインを学ぶ人にとっては、なんといってもアイソタイプの創始者としてのノイラートでしょう。
アイソタイプinternational system of typographic picture education は国際絵言語とか国際絵ことばと訳されますが、
難解精密な論理が語る「世界」ではなく、絵=図で「世界」の諸要素の関係や変化、あらましを示すものがアイソタイプです(ものすごく大雑把にはしょった説明です)。
百聞は一見にしかず。下の図は『新版graphic design』75ページの一部です。1-cは、左から古代ローマ、中世ローマ、現代のローマの人口密度と地域の広がりを示します。
これを見ると中世ローマの人口密度が非常に低く、地域が縮小している状況が読み取れ、「 そういえば疫病の流行とか戦いとかあったんだっけか?」というようなことも考えたりするわけです。
『新版graphic design』74-75ページでは、ローマのほかに、
1250年以降のモンゴル帝国を中心とした都市の街道の広がりとか、
ある年代の、世界の国々が保有していた貿易商船の数とか、
古代、中世における軍備強化の見取り図が、
アイソタイプの基本的な考え方とともに紹介されています。
こうした統計を絵=図に置き換え世界のあらましを捉えた『社会と経済ー図像統計入門書』(1930)は、ひとつの金字塔だと思ったりするんですよね。
編集:t:eeh
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