はじまりは石―永井研治
Litho : as All StartedーKenji Nagai
会 期:2016年11月25日(金)−12月22日(木)
休館日:日曜日
時 間:10:00−18:00(土曜日は17:00閉館)
入館料:無料
会 場:武蔵野美術大学美術館 展示室3
主 催:武蔵野美術大学 美術館・図書館
協 力:武蔵野美術大学 通信教育課程研究室
詳細は → こちら
ムサビ通信教育課程教授であり『新版 版画』の著者のお一人でもある永井研治先生の退任記念展が開催されています。主にリトグラフ作品を制作されてきた先生の、40余年のあゆみを振り返る内容。
リトグラフは元々の版材として石を用いる版画技法で、「石版」と訳されるものですが、展覧会のタイトル「はじまりは石」の「石」はもちろんリトグラフ用の「石」のこと。先生がムサビ在学中に初めて制作した版画が、石を使ったリトグラフだったそうです。
以来、基本的にリトグラフ一筋。大きさによっては他の版材も使われますが、主に石を使ってここまで制作されてきました。
会場に並んだ作品は、石を使ったリトグラフならではのトーンの豊かさが感じられるとともに、とにかく、色が美しいです。
それはモノクロ作品の黒やグレーにも言えること。写真ではわからないインクや紙の表情も含め、是非、直にご覧いただきたい。
あ、写真ではわからないと書いたあとで何ですが、展覧会の図録がまたよいです。
作品イメージ、デザイン、素材があいまって、とてもシックで上品な仕上がり。デザイナーは、MAUPも大変お世話になっている馬面俊之さんです。こちらも是非お手にとって直にご覧ください。きっと、欲しくなりますよ。
ちなみに、リトグラフの石は天然の石灰石なのですが、貴重な化石がでることで有名なドイツ・ゾルンホーフェンに産するものが最上とされています。
先生によると、かつては幾つもあったリトグラフ用の石切り場も、今では一か所だけになってしまったのだとか。そこも、あと数年で掘り尽くされると見られているそうです。貴重で高価であることや、重く扱いが大変なことなど理由はさまざまですが、現在はアルミ板など代用品で制作が行われることが普通になっています。
そのような中、ムサビは多くのリトグラフ用の石を保有しており、学生がリトグラフの主たる版材として石も選択できる環境が整っています。
本場といってよい欧米も含め、ここまで充実した設備や指導体制を有した教育機関は稀だそうです。これは、ムサビが自慢してよいことのひとつでしょう。今後もこの環境が維持されて、素晴らしい作品が生み出されることに期待しています。
リトグラフや石についてもっと詳しく知りたい方は、『新版 版画』に詳しく書かれていますので、是非ご一読ください。
(編集:凹山人)
コメント