「東風になるね、ワトスン君」「そんなことはなかろう。ひどく暖かいもの」
1917年9月のストランド誌に発表されたシャーロック・ホームズ譚「最後の挨拶」の、末尾近くのホームズとワトスンの会話です。延原謙 訳の新潮文庫を引いてます。
ドイツのスパイ、フォン・ボルクを出し抜いてホームズがイギリスに多大な貢献をするというお話ですが、時まさに第一次世界大戦の最中というか終末。作者ドイルは、ドイツとの戦いで息子を亡くしていたこともあり、こういうお話で長く続いたホームズ譚を締め括ったのかな、という気もします。
初めて読んだのが中学生のときで、東風がなぜイギリスにとって辛く厳しい風になるのかわからなかったのですが、大陸(ドイツ)からの脅威の比喩だったのかと今にして思うわけです。
当時のイギリスを舞台にした本や映画には、こうした時代背景がかなりの比重でもって描かれていて、ほんとに大変な時代だったのだと思う。
産業構造や価値観の変化、新しい発見・発明が「よきもの」だけを連れてくるのではなく、破壊も混乱も連れてくる。のし上がって大きな富を手に入れる者がいれば、退廃し没落していく者もいる。
アインシュタインの相対性理論にもとづいて宇宙の謎があれこれ解明され、私たちはわくわくしながら夜空を見上げるけれど、彼が1907年に発表したE=mc2(エネルギー=質量×光速の2乗)という公式が原子爆弾製造の理論的根拠になったという話もあるわけで、アインシュタインも泣いちゃうよね
この季節になると、地に向かって咲き、きれいな姿のまま地に落ちて地を弔う椿です。
椿は首から落ちるからと嫌がる人もいるけど、t:eehはいとしい花だと思うわけです。
年々歳々なにがあっても、年々歳々かわることなく巡る季節と咲く花に手を合わせたくなる、そんな季節ですよね。
編集:t:eeh
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