3月31日に幼稚園教育要領や小学校と中学校の学習指導要領の全部改正が文部科学省より官報で告示された。戦後しばらくは、学習指導要領は文部省から書籍のスタイルで発表されたので、現在でも「改訂」や「改定」とマスコミや現場も言うのだが、本当は法令と同じく政府の新聞『官報』に文部科学大臣告示として公示するので、「改正」が正しい。今回はほぼ10年に一度の要領全体にわたる大幅な「全部改正」である。
この全部改正は本文の文言や構成もかわるので、教員になるために学生が学ぶテキストも、改正が必要になってくる。もちろん、内容やそれにもとづく学校教育現場の実践が変化するのだから、学校現場とともに、大学の教員養成現場も大騒ぎである。法令上の一番の変化は、日本中の国公私立大学の教職課程で条件を満たした学生が免許状がもらえる特権である文部科学省の課程認定を見直して、「再課程認定」と呼ばれる行政手続が行われることである。この学習指導要領全部改正に連動した再課程認定手続は2017(平成29)年度から準備が始まり、2018(平成30)年度に大学からの申請書類に基づいて審査が行われ、2019(平成31)年度の大学入学者から新課程が適用される。この再課程認定が成功しなかった大学では、その年の1年生から教員免許状がもらえなくなるのである。戦後からの制度だが、実は大学現場も10年ごとに大変である。
話が長くなったが、こうした理由で日本中の教員免許を与えている大学は授業内容の見直しの時期であるが、通信教育を行っている大学では教科書は必須だから、10年ごとに教科書を改める必要がある。といっても一斉には出来ないからなかなか大変である。
こんな背景もあって、この4月に武蔵野美術大学出版局から、二つの教職の教科書が刊行された。『道徳科教育講義』と『工芸の教育』である。あれ、ことしの3月31日に告示された学習移動要領なのに、なんで4月に新しい本が出せるのですか、と疑問が出るかもしれない。この教科書で離れ業が出来たのは、小学校と中学校の新しい道徳科「特別の教科である道徳」は、すでに新しい学習指導要領の一部改正があったので、基本的な情報が確定しているという事情があった。工芸も極端な変化がない見込みなので、この段階で可能であった。もちろん、著者がさまざまな情報を把握して、ギリギリまで最新情報を校正で盛り込むべく編集者が努力したことは言うまでもない。
そんなわけで、できたてのホヤホヤの2冊、現在の教育現場と教育行政の変化の最前線を反映したテキストとして、無事にお届けする次第である。
〔ケロT取締役〕
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