6月5日の朝、写真家の山崎博先生が永眠されました。
東京都写真美術館での個展に合わせて作品集の刊行を
相談されたのは2015年の10月末。
写真美術館キュレーターのIさんと一緒に、
鷹の台校の研究室をおたずねしたのが初対面だった。
ものしずかな方で、お声も小さい。
空いっぱいに、太陽が描く軌道を印画紙に焼き付ける
壮大なスケールの作品とは、かなりちがってみえた。
その時、小さな冊子をいただいた。
「動く写真! 止まる映画!!」という画期的なタイトル。
リクルートクリエイティブセンター、2009年発行。
ガーディアン・ガーデン クリエイションギャラリーG8が
「展覧会のために、毎回、作家の方に長時間にわたる
インタビューを行い、小冊子にまとめ」たもの。
山崎先生はシリーズ Vol.28。
この冊子のなかで、山崎先生はとても饒舌だ。
いや、編集がうまいから、饒舌に感じるのかも知れない。
生い立ちから、カメラとの出会い、写真家としての
ターニングポイントが、すべて(と思えるかのように)
書かれている。ただ残念なのは、モノクロであることだ。
それならば、こんどつくる作品集は、とことん作品に
特化したつくり、展覧会に沿ってオリジナルプリントの
忠実な再現につきる。
デザインは、ラボラトリーズの加藤賢策さんに
お願いすることになり、キュレーターのIさん渾身の
台割りが確定したのは、ちょうど1年後。
テスト印刷も、色校も、山崎先生の体調に合わせて
Iさんが御自宅に持参して御意見をうかがい、
それを後で私たちが聞く、という方法をとった。
書籍の発行部数や、定価、それによる印税などの
事務的なことはお手紙をお出しして、数日後、
奥様と電話でお話をさせていただいた。
『山崎博 計画と偶然』の完成をご覧になるまでは、
どうかお元気でいらしてほしい・・・先生が作品集を
手にされたのは個展のプレオープンの数時間前!
オープニングパーティーにも出席され、教え子の
方々に囲まれて、たいそう華やかだったようだ。
(ハムコは卒制の撮影と重なりパーティー欠席)
昨日のお通夜の会場には「櫻花図」4点が飾られ、
ジャズが流れるなか(学校でも、ビル・エヴァンスの
「Conversation with Myself」を学生と一緒に聴いて
いたという)、教え子らしき若い世代の弔問が多く、
なかにはぷりぷりと太った赤ちゃんを抱っこした
小さなお母さんの姿もあった。
山崎先生が、目を細めてこの光景をご覧になっている
ように思えた。
[編集:ハムコ]
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