サントリーホールのミュージサーカスで井上郷子さんのピアノにうっとりしたわけですが、この日、井上さんが弾いたのはプリペアドピアノでした。
たとえばケージの「プリペアドピアノと室内オーケストラのための協奏曲」という曲では、ピアノに限って言えば、53音階の複雑なプリパレーションが指定されています。プリパレーションというのは、グランドピアノをプリペアドピアノに変質させるための仕様書で、どの鍵盤の、どの弦の、ダンパーから何インチの位置に何を挟むかまで一覧表で指定されているそうです。(詳しくは『ジョン・ケージ 混沌ではなくアナーキー』p.55、p.77あたりを読んでください)
簡単に、行き当たりばったりで生まれる音色じゃないということです。陰影があって、しっとりと心地いい。t:eehは苔の庭を思い出しましたね。
ピアノの弦に異物を挟むわけで、会場によってはいやがられることもあるのだとか。いつでもどこでも聞ける音色ではありません。
そしてこれはプリペアドピアノの解体現場です。これこそ滅多に出会える光景ではありません。ほとんどの人が「おおっ…」というかんじで、身を乗り出して覗き込んでいました。暗いのを承知で写真を撮りましたが、こんな有様です。
中央に写っているのが、弦からボルトのようなものを外している男性の左腕です。バシッと写っていたらどんなに面白かろうと思うのですが、こういうのはあからさまでないほうがいいのかもしれません。言い訳8割? 老眼だし。
編集:t:eeh
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