外題替えの恐怖
書籍のタイトルを考えることは、出版社の責務である。この出版局でも出版直前まで大いに議論することが多い。現在では背も表紙も、扉も奥付も、すべて同じタイトルというのが常識で、そうでないと読者も流通関係者も困ってしまう。 近世から明治の初めまでの和本の世界では、外題換え(げだいがえ)は普通だった。本文冒頭のタイトルと、表紙の題簽(だいせん)のタイトルが違うのである。さらに見返(みかえし)のタイトルまで違うものがある。外題をかえるのは出版者の判断で、それでも本文のタイトルはそのままにしておくという棲み分けである。出版の統制と商業化のなか、この時期に広く見られる文化現象であり、著者の意図を反映した本文の...